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『桜井勝延市長がまちの窮状を訴える』
(3/25放送分の文字起こし)
〔収録日〕2011年3月25日(金)
〔ゲスト〕桜井勝延・南相馬市長
〔インタビュアー〕山路 徹(APF通信社代表)
〔文字起こし〕うたさん(うたさんのブログ http://p.tl/mqob)
〔写真〕中島 徹
山路:早速ニュースになっておりますけど、枝野官房長官が20km~30km圏内に於いて自主避難を、というお話しがありました。これについてどのようにお考えですか。
市長:唐突な発表だったので、唐突な会見だったので正直驚きました。
山路:それは全然桜井市長に事前の情報はもたらされてなかったのですか?
市長:ええ、ありませんでしたね。そこで我々11日に大津波で大被害を受けて、みなさんの命とか捜索ができない状況の中で避難をする、その結果として福島原発1号炉が水蒸気爆発をおこしたが12日ですね。
おこした途端に今度は10km圏内は避難指示。そこで我々の市内の一部が掛かるんですよ。
そこの地域は孤立した地域でもあって、自衛隊が入って救助する段階だったんですね。で、避難場所が市内の各公共施設に、小中学校中心に設けて、また生涯学習施設に設けて皆さんを誘導した、これは津波のための誘導だったんですよね。
ところが2日目20km圏内に設定された。
それは3号炉が水蒸気爆発をおこすかも知れない、2号炉が温度が上がってきたと、そういうような流れの中で政府が20km圏外への避難指示ということで 強制的に我々の市内の一部小高区と原町区の一部がそこに入るということで、約1万4千人の方が住んでいるわけですね。その方々を移動させなければならない。これは強制的に移動させなければならなかった。
この市民にとっての苦痛、大変なものがあったと思います。でもそれに協力していただいて、その中でパニック的に「ヨート剤はないのか」「ヨート剤を配れ」とか、そんなこともいっぱいあったんですよ。無理無理、移動させた挙げ句に原町区も鹿島区も海岸線沿いは全滅的な状態でしたので、同じように避難民を避難施設に収容してたんですね。避難してもらってたんです。
そこへまた小高区と原町区の一部の人たちをさらに収容することで、一ヶ所に最大2000人も避難した所があったんです。彼らは避難させられるというのが 強制的でしょ。肉親が災害にあって捜索出来ないような中で20km圏外への避難。そしてそれを20km~30kmに設定されてしまいましたので、そこで屋内待避という形でしたよね。
最初はそれでやむを得ないと思った方々もいらっしゃるんでしょうが、一方で事故の深刻さが続いていって4号炉までいってしまうということで、30km設定された段階でなぜか分からないですが、救援物資とかガソリンとかの燃料物資が入らないからお願いします、と国とか政治家にお願いしても「無理無理、これだけ用立てた」といって、向かいますからといったときに、郡山までしか入らないから、そこに危険物取扱の資格を持った運転手がいなければならないので、その人達も含めて郡山まで取りに行かざるを得ない。
本当に急を要する事態なのに、雪の降る中彼らに行っていただいてそこに12時ごろ着いて、処理し終わったのが朝の2時過ぎだったと思いますけど、そういう努力をしていただいて、やっとやっとインフラを繋いでいってきてるなかで、市民にも自主的に、もう1号炉が爆発した時点で自主待避した人もいます。多くの人間がそうです。
3号炉爆発寸前でも多くの人が自主避難して、もうこの原町川俣線とか国道を数珠繋ぎのように多くの市民が脱出したんです。
それでも避難する手段のないまま待避所にいた方々は不安ばかりが募って、どうしたらいいのかという声が大きくなってきますから、その中でとなりの**さんが、
「俺の所が空いてるから、少しでも遠くに運んだらいいんじゃないか、柳川とか伊達、丸森にも俺が面倒見てあげるよ」
とオファーがあって急きょバス会社の方にも手伝っていただいて、移したんです。というか私がお願いして移っていただいたというのが実状なんです。
その時に、市の多くの幹部職員からは違和感もありましたけれど、出来るだけ遠くに避難させないと、この事態の悪化に対して対応できないんじゃないかという思いからさせたんです。
幸い15日の夜そして朝に、NHKを初めとするメディアに訴えるチャンスをいただいて、その結果としてすぐに隣の新潟県の泉田知事が私の所に「新潟県で も同じ経験があるからぜひ連れてきて下さい。南相馬市民全員連れてきていいですよ」と、「個人の車でもいい、バスで運んでもいい、あらゆる手段で運んでくれば全員を避難するように、今から各自治体に指示を出すから」というメッセージをくれて、本当に救われた気持でした。
山路:国からは何のコンタクトもなかったんですか?
市長:そのときも全く無いです。情報もなければ、16日の朝ですからその時初めて私が情報をいただいたので、対策本部幹部会で、「みなさんどうする」といういとを相談して、避難所にいる人たちに対しては、やすらぎの持てる避難所へ移動させてあげようじゃないかということで、避難計画を早期に作って、幹部会 議でもそういう流れになってきました。
避難計画の中で17日から順次可能な限り避難していただきましょう、ということで16日に説明会をし、17、18、19、20日と4日間に渡って避難所にいた人たちをほぼ運びました。
国自体の深刻さから避難したいという、自宅にいる市民もおりましたので、避難用のガソリンを僅かでも与えたり、バスに運べる時は来ていただいて運びました。
新潟県には圧倒的に多く行ったんですが、我々のこの窮状を言った時に、長野県の飯田市とか杉並区とか杉並区の姉妹都市の東吾妻町とか片品村とかが、自分達でこの惨状を見て迎えに言ってあげるよと、涙が流れるようなオファーがあって、この際だから甘えて一時のやすらぎを避難している人たちにも与えようじゃ ないかということで、是非ともお願いしたいとおすがりをしたんです。
結果、20日までにほぼ5000人お送りして、トータルとして20日過ぎに5万人弱は移動してたんだと思います。自主避難を含めると。
20日というのは、なぜその日程を区切ったかと言いますと、希望をとって運べるのがそれぐらいだし、職員の疲労がもうピークに達してたんです。さまざまな緊張感と恐怖感で。
14日の自衛隊の誤った情報で一部の部隊が、14日の夜100km圏外に待避指示みたいなことを言って、我々の庁舎にも入ってきましたし、病院にも地域 にも入ったんですよ。それで職員もパニックになって、自主避難した職員もいれば、病院自体は病院の職員が避難しちゃって、病院機能が成りたたないという病院も出たんです。
そういうことから、国と情報を共有したいと再三に渡って訴えてきたんです。
山路:つまり、情報がないからパニックになるんですね。
市長:そうなんです。そういう中でやりきりました。
でも、泉田知事は16日に私の声を聞いてすぐに反応しましたが、県知事から私の所にメッセージがあったのが、17日の朝電話で初めてだったんです。
山路:それは福島県知事?
市長:はい。それは彼に怒りを表すとかではなくて、やはりいっしょにこの窮地を現場と共に救おう、というメッセージがもっと早い段階にあれば、もっと安心 感を持ったかもしれないし、これは先ほどの国の問題を言っても同じなんですけどね、現場の感覚が全くない。情報もない中で、我々映像の中から判断せざるを得ないような事態では、これは私だけが映像を見てるんではなくて、避難している人も自宅にいる人もみんな見てるんですね。
ラジオから恐怖をもたらされる情報の中で、やはりここにいるよりも避難した方がいいということです。で、市職員が疲れきっていたのを本当に休ませたいという思いもあったんです。
20日に市職員を集めて、「これから3日間は平常の勤務体制くらいにおとして、是非とも休める人は交替で休んでください」ということを申し上げました。
それが市職員にとって不安だったかどうか分かりませんが、何としても彼らを休ませてもう一度エネルギーを復活させないと、何かあった場合に、市民に対してもっと厳しい選択をさせる時に一致した方向が見えないんじゃないかということで。
次に私は、皆さんに休んでいただいて24日には市民に一定の声明を出すと。その際は市民に対して勧告という言葉を使うかも知れない、それは今の事態をいくらかでも避けるために、市民に対するお勧め、お願いなんだとということで、市職員に訓示したんです。
でもこの窮地を救うために市民の感覚、市民の安らぎの場と我々は一致して、この不安を少しでも解消する措置としてもう一度それをしないといけないんじゃないかという風に思って、職員に話をしたんですが、職員は「我々は自宅の寝たきり老人を抱えているときに勧告なんかされたら、休む暇もないし彼らの窮状をどうやって救うんだ」という悲痛な訴えもありました。本当に職員のテンションが私を食い入るように、突き付けるような目つきが、本当に窮乏というか、この男何を考えて言ってんだと言わんばかりの、ほんと今までにない目つきを、視線を感じましたよ。
ここでも私はこれを訴えていかなければ、次の事態に備えられないだろうと言ってお願いしました。
で、3日間休ませる中で状況もまた変わってくるんですよね。落ち着いたんじゃないか、レベルも測定値も3とか2とか1に下がってきているのに、どうして物流も少しずつまた厳しいという状況の中でも入ってきているのに、何故そんなことをするんだ、という声もありました。
山路:自主避難を今ごろまたという声もね。で、これまでの状況を見てますと30km圏内も、今回のこうした20km~30km圏内の自主避難の話も、全く桜井市長の方に事前に話がなくて、結局政府がそれを決めていくと。で、政府の決めたお話っていうのは現場の状況を全く反映していないから、結局南相馬市の決定との間の非常に大きなギャップがありますよね。
市長:我々の方が早いんですよ、やってることが。自分達が不安を煽るわけじゃないんだけど、市民自ら自分の命を守るために避難したり、避難所にいる人たちを自主避難という形で避難させた。
一方で残る人たちに対してはしっかりと支援していきましょうという方針で来たところに、事業者の中にもこのままでは会社が大変だというので、自主判断の元で再開したいと悲痛な訴えで私のところに来ました。国に対して規制解除させてくれと。
山路:30km圏というね。だから30km圏があるがためにね、物資も入らない、ガソリンも入らない、ボランティアも入りずらい。さまざまなものがこの30km圏という壁の中で全く機能しなくなってしまって、一方で南相馬市 民は屋内にいて下さいって。家にいてね、じゃあ物資は、食べるものは、ガソリンはってそこには全く運び込めないと言う。
市長:だから、本当に漂流しているんですね。国がそういう措置を執ったがために起こったことなんですよ。
一方で30km圏外の相馬市は順調に回復していくように、物資は入り始めるし金融機関は窓口を開けていく、ショッピングセンターとかスーパーとかそういうのが開き始める、コンビニも開き始めるということからすると、ギャップがあまりにも多いんですよ。市民にとってそのギャップというのが、我々が拘束されているその感覚をわからないので、市はなんでこういうふうにしているの、とくる訳ですね。
客観的に我々こういう立場にいると、そのバリア、壁が非常に高い、大きい物に感じる訳なんですよ。
ここを解除してくれと言っても、多分解除できないメンツもあるんでしょうし、この声明を出す直前に政務官から電話が入ったんです。今日ですよ。どういうことを実際、長として望んでいますか、と。
で素直に、今残っている人たちがこういう現状にあって、自己再生しようとしているよと、銀行も窓口開きたいと思っているんだと、物資も境さえなければ入れたいよと言う人もいるし、自分達の力で再生しようとする動きが強まっているのに、往来を自由にさせることを、承認、保証すべきだと申し上げたんですね。
そうすればいかなる事態が合った時にも自分の責任で、自由なんだから待避もできるんじゃないのと。
そういうことを保証されなければ生殺し的になるし、物流も滞るし生産現場では生産できない事態が進むわけで、ここをだまって見逃すわけにはいかないんだと。
我々のインフラが東北電力さんの協力で、20km圏内でも事業所には電気を通してもらうとか努力してもらってるんですね。
山路:今日20km圏内に行きましたら、電気は来てると。水道も大丈夫だと。相馬市としてはすごく努力しているのがよく分かったんですが。
市長:国がそういう措置をとっても、我々としてはそこだけは最低限維持して皆さんには活動を自由にさせてあげたいという思いで電力さんにお願いしてる訳なんです。そういうことをやりながらも、国は屋内待避そのままで今度は自主避難。
我々は彼らを勇気づけるためにインフラをしっかり守っていきましょうと思って頑張ってきて、事業者も再開させなきゃならない、頑張るから市長、国に対してこれだけは言ってくれ、と来てるわけでしょ。それをそのまま私ら言っていきますから。内閣府のほうにね。
でもそれが出来ないんであれば、バリアを取れないんであれば、往来する物流とか人の動きを保証することだけは国の力でやってくれと。我々は黙認している だけなんで、国がそう声明してもらえれば活動する事業者も自由にもう自由往来できるんだから、自己判断で自己責任でできるでしょ。
そうすればもっと希望が見えるし、彼らも少し活力として出てくると申し上げた途端にあの声明ですから。あらららら、と。
山路:だから実際問題として政府がこの原発の問題を今の段階で、非常に 深刻なものととらえているのか、または、いやこの状況は収束の状況にあるんだと、どうとらえているかで行動が全く変わってくる訳ですよ。それ自体は全く市 長の所にも情報として、明確でないにしろ政府では見立てとしてこう捉えているんだ、ということも話として届かないんですか。
市長:私の所にきた民主党の若手の代議士、高邑勉(たかむらつとむ)氏が来た時に、全ての代議士が来た時に申し上げてるんですが、とにかくここに張り付いてこの現状をしっかり認識してやって下さいよ、ということで2日前に高邑さんがここに張り付いて、我々の状況を調べる様になった。
それで30km圏に拡大されるかもしれないようなシミュレーションをしていると、それはいろいろ情報収集をしているよということが伝えられたんですね。
それはどういう状況かというと、一律に円じゃなくて、客観的データに基づいて放射能がどれだけ拡散していくのかというシミュレーションをしているようだと。今度拡大するにあたっては、前もって知らせるようにするようだという情報もいただいてたんです。
そのことは深刻さが拡大しているという意味だと私は捉えてましたし、次の日です。
新聞にあの情報が出てるじゃないですか。波のようにシミュレーションで、ここは危ないんだというお墨付きのようなもんですよね。飯舘村さんは全くそのデータの中に結構入っているじゃないですか。我々のところはそこから少し欠けてくんですね。
そうすると一律に今まで円で描いてきたことは何だったのかというのと、今起こってる事態について客観的データを殆ど我々に示してこなかった事実は何なんだと。
飯舘村さんの住民だって大変な思いをしてるし、我々より10倍って値が出てくるわけで、住民の不安はかなりもものがあると思います。
山路:飯舘村さんは30kmより外ですからね。円で線を引くように決められても現実には放射線の測定をやっていくと、飛び地のようにあちこち測定値がバラバラで。
市長:福島は我々より3倍も4倍も高いわけで。
山路:実は、30km圏内と言われている南相馬市はわりかし低くて、福島だとか、郡山、飯舘村の方が遙かに測定値が高い。それは南相馬市民の方もわかっていて、そこに矛盾を感じている。
市長:福島に避難している市民がこちらに戻りたいと言ってるんですよ。この現場サイドと国の持ってるデータを共有していかないと、市民も不安を感じる今、我々を待避させるという納得できる材料ではないんですよね。
何回も言ってるようにここに張り付いて、現場の緊張感とか市民の不安とか逆に、市民のエネルギーとかいうものをシッカリ感じて政府に届ける、東電に届ける。東電からその情報を頂くような措置をしていかないとなかなかこれは違和感が取れないんじゃないかと。
山路:30km圏をなるべく早く外していただいて、できればもっと実態に即した新たなマップを作ってもらって、ここに物資が入るような形になっていかないと。
市長:今日、松下副大臣が来たんですけども彼にも同じことを申し上げました。それで国の職員ないし政治家をここへ貼り付けてくれと。
明日から貼り付けると約束しましたので、明日からたぶん来てくれるんだと信じております。
是非それをやっていただかなければいけませんし、今日声明したその内容の根拠についても我々に示していただけなければ、その深刻さがあるのか又大丈夫なのか、大丈夫ならば市民の多くは確信持って事業展開に当たれる訳です。
山路:避難所生活で体を具合悪くするより、自宅で休むほうがね。
市長:そう、お風呂にでも入って、そう、そうしたいんですよ。一時でも市民にやすらぎと安心感をもたらされる環境を、政府自らの責任、東電の責任でやって いただきたいし、我々は市民に勇気づけることが使命ですからね、勇気づけられるような最優先的措置をいっしょに作り上げていく努力をしていく必要があるんじゃないかと思いますよね。
山路:わかりました。国は(20~30km圏の避難検討)声明を出した訳ですから、市民は混乱していると思うんですよ。市民の皆さまに市長から一言メッセージをいただければと思うんですが。
市長:やはり市民の皆さまにぜひ訴えたいのは、我々は市民の皆さんの生活を守る、命を守るということを最優先課題にしているんですね。そういうことからすると今回の津波、そして原発事故が深刻化するこの事態の中において、市民を優先的に避難させると同時に本当に事故が深刻化しないんであれば、再生に向けて 一歩でも前に進みたいんです。市民の再生力を信じて支援したい。
ですので、我々この両面的な措置ではありますけれども、どちらも市民の生活と命を守るんだということのために行っている措置なので、皆さんからすれば違和 感はあるかもしれませんが、私はその方向性のために全力で国に対しても東電に対しても、そして県に対しても一緒に再生のためにがんばっていくということを申し上げたいと思います。
(中略)
これは世界史に残る問題ですよ。我々はこの危機というものを世界に対しても、我々こういう風にして順序立てて市民の命を守っていくんだということが伝わればいいし、それが間違いのない方向性をもって、世界の人々に対してもこういう事故が起きた際には、市民と一緒になって再生・復興に向けて努力していくんだということが伝われば、我々の今の苦痛な時間も無駄ではないのかなというように思いますけどね。
山路:はい。本当にどうもありがとうございました。どうぞ、お体だけは気を付けて頑張ってください。
市長:はい、ストレスを栄養にして暮らしておりますので。
2011/4/12 03:17
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