【APF SP】 第1回 《いつか どこかで》 木野村レポート ~中部電力浜岡原子力発電所


今回の「いつか どこかで」は、中部電力浜岡原子力発電所の周辺取材に来ました。

3月11日の東日本大震災の影響を受けた福島原発の深刻な現状から全世界的に原子力発電所の在り方を問う風潮が高まっています。ツイッター等を見ていても原発即停止や原発全廃の文言がならび、震災後、ドイツ等の諸外国を含め日本でも都内をはじめとして、毎週のように全国的にデモやパレード、勉強会等が行われています。
そんな中、6月11日に名古屋の市街でも反原発のデモが行われるということで、当日も取材に向かう予定のAPF通信社としては、先ずは現場に立って自身で感じなければ何も伝えられないという観点から中部電力浜岡原子力発電所の周辺取材に来ました。

カーナビの画面 海岸線まで200メートル
台風2号の影響による雨天の中、東名高速を走り、名古屋より約1時間で掛川ICに到着。掛川ICを降りると茶畑をはじめ穏やかな町並みが続き、約20分程で浜岡原発に到着です。去る5月6日に総理大臣からの運転停止要請を受け、9日に中部電力が要請を受諾したため、原子炉の運転停止からすでに3週間が経とうとしていますが、休日の早朝ということもあり、隣接する国道を走る車もまばらで原発もその周辺地域もとてもひっそりとしています。

浜岡原発の南西側の海岸

浜岡原発の西側道路
さて、現場に立ち先ず思うことは丘というか山の頂にある原発はフェンスと木々に囲まれ、とても安易に近寄れないという印象でした。東側の入口には警察の白黒パトカーが待機し、都内でよく見かける官公庁や大使館の警備と同じようにその建物自身の重要性を感じさせますが、その反面では一般に見学できる施設も併設され、完全に閉ざされた施設というわけでもないようです。また、原発のすぐ西側では巨大な風車がいくつも回り、圧倒されるような光景でもあり、実際に原発のすぐ隣で風力を利用した発電も行われているのだということもわかりました。

施設西側の風車
その後、近くを歩きいくつかの声を聞いてきました。以下、例を挙げ自身の感想を添えます。
原発に隣接する浜岡砂丘には多くのサーファーが訪れ、波を楽しむ姿もみえました。地元はもちろん、遠くは関東や関西のナンバーの車両も来ていましたので声を聞くと関東から来ていた若者は「関東の海には若干抵抗があるので波を求めて来ました」と話し、いつもより少し荒いであろう波に向かってパドルを始めました。(20代男性)
→正直、原発についてどうこうではなく、今、楽しいことが大事?という感じでした。
原発近くのコンビニでは操業停止以降、原発関連の客足が若干減った感じがするとの声も聞かれ、商売として考えるとこの先の状況がどうなっていくか複雑な気持ちもある。(30代男性)
→やはり、これだけの巨大な施設があり、それが稼働しているのとしていないのでは、発電所に関わり、来所する人たちの数に違いが出たとしても不思議ではないと思います。
傘を差し散歩をしていた女性は、知り合いが原発関連の仕事をしているので複雑ではあるが、福島の状況をみるとやはり一旦運転を停止して安全確保を優先してもらいたいとの声も。(60代女性)
→これだけの施設ですから原発の近くに住み、それで生活をしている人も多くいるようです。

原発の東門(右奥の建物が5号炉)
今回、発電という観点で考えれば、風力であれ火力であれ原子力であれ、それぞれの長所と短所が存在し、また、防災という観点で考えれば、ある程度を基準とした想定のもとに全てのものが設計され作られる。放射能汚染の問題でも自分の中の基準をどこに置いて、どこまでを自分の許容の範囲にするか? その為には自分でどれだけの知識や情報を集め、その真意を自分で確かめることが大切だと考えます。浜岡原子力館の展望タワーでも案内板に「海抜62m」とあり、今回の大震災では非常に高い津波が、いたるところで発生したわけですから、もしここで同じことが起これば大変な結果になるでしょう。

5号炉
多くの人は、今回、浜岡原発が運転を停止したことである程度の安堵感に包まれていると思います。でも、私の感覚では、ガスコンロの上に置いた鍋の火を消しただけのことでまだ鍋には煮えたぎった物が入っている。それが冷めるにはまだまだ長い時間がかかり、出来ることなら冷めたものであってもコンロの上から降ろさないと、ひっくりかえる可能性だってある。地盤が危険であると言われる浜岡原発ならなおさらなのかも知れません・・・。
今回の取材のまとめとして、あの大地震の当日、震度6の地震が続く夜の中央道を東京に向かい、都内でチームと合流し、通行止めになった東北道を北に向かって車を走らせて以降、私自身は「完全なものは無い」と考えるようにしています。というより、崩れた屋根や割れた高速道路、倒れてしまった新幹線の架線を直接見たことでそういう気持ちになりました。そして、あの日以来、色々なことに対する気持ちが大きく変わりました。でも現場に入った一人のジャーナリストとして、今回の大震災で起きてしまったことを伝え、自分の身近なものに置き換えることで、もう一段さらに理解を深め、今回の出来事をニュースで聞いた遠くの町での悲しい出来事としてではなく、自分や恋人、家族、大切な人が、あの日起きてしまったことの 当事者になったとしたら・・・? と素直に置きかえることができたとしたら、原発問題だけでなくこれから山積するであろう多くの問題に対しても違った感覚になれるのではないでしょうか?

浜岡砂丘
みなさんはどうでしょうか?
では、また「いつか どこかで」
2011/5/31 木野村 匡謙

コメント / トラックバック387件

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