今回の「いつか どこかで」~ sometime somewhere ~ は、岐阜県岐阜市の中西郷「なかさいごう(岐阜市の北西部)」にある、板屋川・八王子橋及び八王子神社付近からの報告です。(今回の写真は、感度を上げて撮影をしており、全体に少し粗くなっています。)
私は、過去にこの近隣に住んでいたことがあり、この場所には何度か来たことがあります。約10年振りにこの場所に立ち、最初に思ったは「ずいぶん景色が変わったな」ということ。
私が知っているこの場所は、川沿いに学校、神社があり、その社を囲むように薄暗い杉林が立ち、あとはわずかな民家、田畑や水田のほか、ホタルが生息するこの板谷川以外には何も無く、本当にほのぼのとした情景が広がっていたはずだったのですが―
着いた時は、まだ空も薄暗い程度で、川のほとりに立ち並ぶ新しい住宅、整備された道路や信号、コンビニもハッキリと確認できたので、正直、「こんなに変わっちゃって、ホタルなんているの?」というのが率直な第一印象でした。
しかし、暗くなるにともない「ホタル」が舞い始めたのです!
最初のうちはわずか数匹だったので、環境が変わると、「この程度かな?」と思っていたのですが、予想に反して沢山出てきました。
さて、そんな中、近くにいた初老?のおじいさんが、真っ暗な中で写真を撮り続ける私のことが気になったのか、こちらをチラチラと見ていたので、「すみません、お話を聞かせていただけますか?」と訪ねると、「待ってました」とばかりに話をしてくれました。実際、アポ無しで突撃取材する場合は、こういう人の存在は本当にありがたいです。デモ中継でもそうですが、声を掛けるのは割と難しいものです。
以下、このありがたいおじいさんの話。
ホタルは、「ゲンジボタル」という種類で自然発生したもの。近隣の住民や子供たちも普段から、「板谷川をキレイに!」という意識をもっている。ここは特に観光地や商店街ではないので、ホタルがまちの大きな収入源になるわけではない。逆に見物客が増えると交通渋滞や路上駐車の問題、ゴミのポイ捨て等の問題が出てくる。またホタルという生き物はあまり遅い時間には光らないが、それを知らない人は、より暗くなる遅い時間に来たり、構わず騒ぐ若者や車の騒音等の問題もある。でもホタルが飛び交うのは1年で2週間程のことなので、近隣の住民もある程度は寛容な気持ちで、この自然からのささやかなプレゼントを少しでも沢山の人と分かち合いたいと考えている。ホタルの寿命は約10日で、光を放つのは交尾の為である。
実は今回、歌の歌詞にもあるように、「蛍の光~♪窓の雪~♫」と絡め、「光というのは実に尊いもの。明かりのなかった昔は僅かな光でも利用して暮らしていた」という結びを考えていました。
しかし、取材中にある光景に出くわし視点が変わりました。
それは、ホタルの光を妨げる車のヘッドライトでした。親子でホタルを見ていた人が「まぶしいなぁ。ライト消せよ。」と隣で呟いたのです。今夜は場所が場所なので当然だとは思いますが、こんな状況だと人は「明かり」を嫌がるのです。
本来「明かり」というのは人が慣れ親しんだ非常に便利でありがたいものです。例えば、僕らの仕事は今回の取材を含め、車内で機材のセッティングや整理をすることが日常的にありますが、そんな時は、ルームランプのスイッチを押すだけで車内が明るくなり、仕事に入ることができます。自動車のライトは燃料を元にして発電しているのでチョット意味合いが違ってはきますが、世の中の多くの「明かり」は電力会社の発電によって作られ、私たちはそれを買って使っています。
しかし、この夏はいつもの夏とは違います。
大震災を引き金にした福島原発の問題から始まり、日本中で原発運用の是非について議論が起こり、「節電」が叫ばれるようになり、聞かない日はありません。実際に生産工場などでは、木金に操業を停止し、電力消費の少ない土日を稼働日としたり、企業では、サマータイムの導入やエアコンの設定温度を高くするなど、多くの案が出され、また役所等では恒例のクールビズをさら進化させたスーパークールビズの採用、更にはアロハシャツや短パンの着用など、自分としては「ちょっとソレどうなの?」という動きも出てきています。
去る6月11日、震災より3ヶ月という節目でもあり、現状なかなか収束することができない福島原発の状況や、それによる放射性物質の飛散に対して、日本をはじめ世界中で反原発の運動が起こり、多くの人々がデモに参加し、私自身も岐阜と名古屋をハシゴする形で現場取材に出向きました。
デモでは、「反原発」・「脱原発」・「原発廃炉」などの文言やプラカードが飛び交っていましたが、この危機的な状況の中で「反原発」に賛同することと引き換えに一体どれほどの人がこの夏に訪れるであろう電力不足に対して具体的な「節電」という行動に取り組んでいけるのでしょうか。
電力会社のある試算では、「消費電力に対し、発電量が約15%不足する」という具体的な数字が提示されました。15%であれば何とかなりそうな気もしますが、気温により状況は変わるでしょうし、実際に生活の中で15%を絞るとなると、頭で考える以上にかなりの努力が必要になります。更にいえば、15%という導き出された数字について、具体的な根拠はあるのでしょうか?
今回の「節電要請」は、オイルショックがあった1972~73年以来、約40年振り。つまりは、この国が原子力発電に依存し、発展してきたという歴史ともピッタリと合致するのです。きっと今年の夏は、個人レベルで相当の覚悟を持ち「節電」について考え、実行していかなければならない特別な夏になるでしょう。現実に乗り切ることができれば、脱原発に一歩近づけることにもなります。
しかし、乗り切れないとなれば、浜岡をはじめとした多くの原発に再び火を入れる事になるかもしれません。わずかな光ではあるが、周りをほんのりと照らすホタルに「お前達に本当に出来る?」と聞かれているような気がしました。みなさんはどう考えますか?
ではまた、「いつか どこかで」~ sometime somewhere ~
現地取材 /平成23年6月8日(水)
記事・撮影/木野村 匡謙
西郷ほたる祭/2011年5月27日(金)~6月12日(日)頃(20~21時)
駐車場/あり
場所/岐阜市中西郷3丁目付近(東海北陸道岐阜各務原ICから一般道を北西に40分)
問い合わせ先/058-239-2473(西郷公民館内 水と親しむまちづくり推進協議会)
058-232-7181(岐阜市農林畜産センター)
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