【APF SP】 第5回 《いつか どこかで》 木野村レポート ~福島第1原発の事故による放射能漏れの脅威にさらされている福島県 vol.2

今回の「いつか どこか」 ~sometime somewhere~ は、第4回に引き続き、福島県からの現地報告です。

私は本来、悲しくなる写真は撮らないと決めていました。それにカメラマンとしては、あまりシャッターの数を切らないほうかもしれません。実際の現場でカメラを構えて、ファインダーを覗いたものの、シャッターを押さずにカメラを下ろすことも多々あります。それは、自分の目で直接見るのとファインダー越しに見る映像とで、受ける感覚が変わって見えるからだと思います。それと同じように、被災地などで直接見た現場とテレビなどを通じて伝えられる間接的な現場にも、かなりの違いがあります。

今回の福島取材では、第4回「いつか どこかで」でお伝えしたビックパレットという巨大な避難所の現状を含め、福島第1原発の20キロ圏内に再び入ったこともあり、視界に飛び込んでくるもの全てが本当に衝撃的でした。

今回の現場では、延べ1,000枚以上の写真を撮りましたが、そのうちピントや構図をふまえたうえでボツにした画像を省いても、500枚程の写真がAPF通信社の素材として残っています。またそれと同時に未編集ですが、映像素材も数多く残っています。
今後の「いつか どこかで」は、数回にわたり現場で直接感じたこと、報じられていない現実などを紹介します。また、映像素材を含め現場の状況をより皆様にお伝えできるような新しい方法への移行も企画しております。ご期待下さい!

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まずは、20キロ圏内のある牛舎にいた小さなメスのホルスタイン。母牛が同じ牛舎の中で餓死してしまい、朽ち果てた遺体もそこにあるので、この場所を動こうとしません。外に出たとしても、この場所に戻ってくるのです。牛舎の中の衛生状態は極めて悪く、家畜は移動禁止措置の対象になっているので圏外に連れ出すこともできません。電気が来てないので空調も止まり、水や餌もなく、一体どうやってこの3ヶ月間を過ごしてきたのか、不思議です。のちに畜主さんからの情報で震災直後の14~16日に生まれたことが判明しました。そこで間をとって、15日生まれとし、「いちご」の愛称をもらうことになりました。ちなみに「いちご」は現在→http://ameblo.jp/hari2106/entry-10944724639.html

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自然に居るはずがないので、もともとは家畜だったはずの豚がいました。しかも至るところに。畜主が避難する前に逃がしたのか、誰かが放したのか、自力で脱出したのかは不明。でも、大自然のなかでとても生き生きとしていました。取材車で近づくと、「ブヒブヒ」と近寄ってきます。小さすぎて写真には写っていませんが、草むらの中に小さな子豚もいます。驚いたのは彼らの動きが早いこと早いこと。本当に幸せそうな彼らに数時間後、信じがたい結末が待っていました。詳細は後日・・・。

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南相馬を含め、福島県は和牛の畜産が有名で、写真のような立派な和牛も沢山います。痩せてはいますが、近くでみると本当に凛々しい。当方の取材では、牛だけでも2,000頭近くが、いまだ生きながらえていると聞きました。豚と同じく彼らも動きが速い!田んぼのアゼなども軽々と飛び越えていく姿は実に勇ましい!一見、元気そうですが、牛も豚もひとの手を借りないと、越冬はできないそうです。彼らを何とか助けてあげることはできないものでしょうか。

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ある民家の前に居た五頭の犬。そのなかに片足の無い犬が二頭いました(右端と左端の犬)。どうして片足を失ってしまったのかについて、聞いた話では、「イノシシの罠にかかった」とのこと。しかも、動物病院などで治療してもらったわけではなく、自分で舐めて治したそうです。一番右の犬がボス?という話ですが、遠くが見渡せる場所を陣取り、ボス?は黙って遠くを眺めていました。3月11日までは、それぞれの犬に自分の居場所(家)や家族(飼い主)がいて、普通に暮らしていたのでしょうに。雑誌などでは「野犬化」した犬の話も聞きますが、私が見た犬たちは少し警戒心はあるものの、非常におとなしい犬ばかりでした。

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第2原発近くのガソリンスタンドにいたシェパードのような雑種のような何とも言えない犬。ちょっと強面。最初、取材車に向かって「わっ、人だ!」という感じでしっぽを振りながら近づいてきました。赤い首輪が実に印象的で可愛い。しかしこの犬、奥に写っているもう一頭の犬のことがとても気になるようで、その姿が見えなくなると探しに行き、確認すると安心するのか、こちらへまた戻ってくるの繰り返しでした。APF戦術チームは麻雀が好きなわけではないですが、早く決着をつけたいという意味で、赤い首輪のシェパード?を「ロン」、もう一頭を「ツモ」と名づけました。取材車に積んであったおやつのバームクーヘンを与えると最終的には手から直接食べるまでになりましたが、結局逃げられてしまい、「ロン」は「どろん!?」と改名されました。前回の取材から二週間ぶりでしたが、同じ場所に居たこの二頭。次に行くまで無事であって欲しいと願っています!

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現地にて情報が入り、急遽取材に向かった養豚場で7月3日に生まれた子豚。まだヘソの尾が付いたままの子もいました。畜主さんによれば、豚は3ヶ月と24日で出産にするとのこと。つまり震災があった3月11日の直前に種付けしたことになります。計算するとほぼピッタリ!この後、6日~7日にかけて最後の一匹が出産したとのことで、この畜舎にはこのようなチビ助が現在30匹程います。具体的な大きさは手の平に乗る程度。手前に横たわっているのは母豚です。授乳の真っ最中というかずっとこのままで乳を吸われていました。冒頭に紹介した「イチゴ」にしても、この子豚にしても、生まれた場所がどこであったとしても「新しい命」であることに変わりはありません。「イチゴ」を避難させた牧場を含め、「希望の牧場プロジェクト」を成功させ、ひとつでも多くの「命」を救うことができないものでしょうか・・・。

まとめとして、今回の取材では、偶然にも普段の生活では絶対に見る事が出来ない動物たちの本来の姿に触れることができました。サファリパークなどの作られた自然とも違う、人が消えた街で、家畜やペットが震災後の数ヶ月をほぼ自力で生きているのです。しかし、このままひとが何もしなければ、彼らは最後は飢えて死ぬことになるでしょう。また家畜については殺処分されることもあるでしょう。このような環境下で生きている彼らは、ひとが考え方を変えることで、貴重な検体にも成り得るのではないでしょうか。彼らの「命」を守ることを第一の目的として。だって、口蹄疫や鳥インフルエンザのようにウイルスや菌に感染しているわけではないのだから・・・。20キロ圏内にはペットをはじめとして、多くの家畜たちが今も生存しています。また多くの命がそこある以上、新しい命が誕生しているということも紛れもない事実です。

震災の直接的な被害はもちろん、それ以降に起きた多くの問題で避難民はもちろん農家の人や酪農家が自殺をしています。単純に「苦しかったのだろう」と、想像で片付けるのではなく、震災で生き残った人がなぜ死を選ばなければならなかったのか、生き残ったペットや家畜までもが死んでゆかなければならないのか、もう一度考えることも大切なことではないでしょうか。
みなさんはどう考えますか?ではまた、「いつか どこかで」 ~ sometime somewhere ~
記事・写真/木野村 匡謙( twitter/j_masakane)

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「福島原発20キロ圏内 犬・猫救出プロジェクト」では、寄付金はもとより、
保護犬猫の一時預かりボランティアさん、里親ボランティアさんを募集しています。
ご賛同、ご協力いただける個人・団体・動物病院等の方は是非ご連絡を下さい。
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〔連絡先〕 
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中部方面 APF通信社東海支局 kinomura@apfnews.com
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コメント / トラックバック33件

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